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僕が一日の大半の時間を費やしているこの部屋からは、隣の公園の広場を見下ろすことが出来る。
都内でも大きいことで有名なこの公園には、多くの人が足を踏み入れている。友達同士でボール遊びをする人、ひたすらにジョギングをする人、親子連れで歩く人、恋人同士で時間を過ごす人、犬の散歩をする人、ただ散策をする人、目的もなさそうに芝生に寝ころぶ人、大道芸を披露する人。ごくまれに、見るからに不審な行動を取る人もいる。パッと目に映るだけで、こんなにも多くの人がいる。
こうやって窓の外を見ることが、僕の唯一の楽しみだ。
体の中の抗体を作る機能が悪くなるという病気を患っている僕は、大人の許可なく外に出ることは叶わない。もし外に出てウイルスが体の中に侵入してしまったら、瞬く間に命を落としてしまうようだ。
この病気がいつ治るかはお医者さんでも分からないようで、僕は物心ついた時からこの部屋にいる。
公園を満喫する人を見て――特に、僕と同年代の子供が公園の中を走り回っているのを見ると、「いいなぁ」という言葉がつい口から漏れる。
しかし、だからこそ、いつか僕もこの世界を自分の足で歩きたい、と希望を抱いて生きることが出来る。
「――あ」
公園を見たら、はしゃいでいた子供が石か何かに躓いて転んでしまった。声は届かないけど、痛ましい声で泣いていることは、その姿だけで分かった。僕はガタッと椅子から立ち上がった。けれど、僕が助けることは叶わない。
しかし、そんな心配も束の間、優し気なおじさんが子供に手を差し出していた。子供はおじさんの手を取ると泣き止んで立ち上がった。
そして、そのまま何もなかったように、また再び走り始めた。
一度転んだのにも関わらず、またすぐに走り出せるのは、実はすごい能力だと最近になって思う。
検査の結果が悪いと聞いた時、立ち直るまで時間が掛かる。一度躓いたら僕は暫くは塞ぎ込んでしまう性格だから、あの子のようになれない。
「よし、僕も頑張るぞ」
窓の外を見ながら、いつか絶対に僕は病気を治してみせると誓った。
<――②へ続く>

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