小説– category –
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糸と金②
・糸と金① *** 昔から私は人とのコミュニケーションが下手だと自負している。 人と目を合わせることが苦手だし、最近の流行についていけないし、人と比べてやること成すこと全てが遅いし、そもそも何を話していいのか分からないくらい話すことが... -
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糸と金①
*** 私――細田紡の平日の流れは、だいたい決まっている。 朝六時半に目を覚ますと、簡単に身支度を済ませ、テレビで朝のニュースを見ながら朝ご飯を食べる。私のお気に入りのニュース番組のコーナーは、最近話題の四人組男性アイドルグループ『カ... -
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[小説]誰が為に④
・誰が為に① ・誰が為に② ・誰が為に③ *** いつものベンチに座りながら、僕は万吏先輩が来るのを待っていた。 ここ半年ほどは万吏先輩から執拗に誘われることを悩んでいたというのに、まさか僕から万吏先輩に呼び出すことになるとは思わなかった... -
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[小説]誰が為に③
・誰が為に① ・誰が為に② *** 「んー、この時期に外のベンチで座りながら話すって、なんだか新鮮だな」 僕より一つ上の先輩である右代亜子先輩は、いつの間にか僕の隣に座って楽しそうに顔を上げていた。 僕が見ている景色は、真っ青な空を妨げる... -
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[小説]誰が為に②
・誰が為に① *** 僕が万吏先輩に出会ったのは、二年生に進級した春の日のことだった。 その日の構内は、入学したばかりの新入生で溢れていた。目的が決まっているのか、未来に希望を見出しているようなキラキラとした瞳を誰もが浮かべているのが... -
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[小説]誰が為に①
*** 都内の有名大学に通い始めて、早一年半が経過した。 大学生といえば、自分のしたいように自由に行動することが出来る、というのが魅力の一つにある。遊びに耽る者、恋人とベッタリ時間を過ごす者、真面目に勉強に励む者、四年という限られた... -
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[小説]『竜のいない世界』④
・『竜のいない世界』① ・『竜のいない世界』② ・『竜のいない世界』③ *** 空を見上げれば竜、地を見下ろせば竜。 この世界に竜がいることは、火を見るよりも明らかな常識だ。 だから、竜の被害を受けないことを前提とした生活を人々は強いられ... -
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[小説]『竜のいない世界』③
・『竜のいない世界』① ・『竜のいない世界』② *** 蛇が私の体内に入って来る直前、時間の流れが止まったかのような錯覚を抱いた。 白い胴体に赤く鋭い目が私を射捉えた時、私の内側まで全てを見透かされているような気分になった。まるで目の前... -
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[小説]『竜のいない世界』②
・『竜のいない世界』① *** 竜のいるこの世界に生きる人間には、守るべき暗黙のルールが二つある。 地を歩く竜がいる町に留まることは、出来るだけ避ける。空を舞う竜が見えなくなる夜は、出来るだけ外を歩かない。 だから、私は今まで夜という... -
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[小説]『竜のいない世界』①
*** 上を見ても、下を見ても、この世界には竜がいる。 上にいる竜は、大きく長い体躯で優雅に空を舞っている。下にいる竜は、人と同じ形をして、我が物顔で地を歩いている。 空を舞う竜も、地を歩く竜も、人間と同じ生活を送ってくれるなら、誰... -
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[ノンフィクション小説]青空に描いた祈り -チョンミョンソク牧師に重ねた理想像-
*** 『英雄はいる。――誰かの空想の中に』 それが、少年が心の中に導き出している答えだった。 文明が発達し、わざわざ遠く足を運ばずとも世界と繋がることが出来るこの現代、自分の立場を放り出して、危険な地へと赴き、手を差し伸べる人はいない...
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