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芥川ソラネは今世間の注目を集めている芸能人だ。
細やかな肌にキリッとした目つき、小さな顔に対してバランスの取れた身長、人に好かれる愛嬌、演技力、挙げればキリがないほどの天賦の才をソラネは有していた。
そのおかげもあって、十九の時に芸能界デビューをしてから、ソラネはずっとテレビやネット番組に引っ張りだこだった。そして、実際にソラネが出演した番組は高視聴を確保し、そのことが更にソラネが活躍する場を増加させた。
富と名声を得た芥川ソラネの人生は、概ね順風満帆と称してもいいだろう。
芥川ソラネのように生きたいか、と道行く人に問えば、十人中十人がそうだと頷く。
しかし、それにも関わらず――、
「満たされないわ……」
当の本人は、自分が歩む人生に対して満足することが出来ていなかった。
どれだけ芸能界で華々しい活躍をしても、ソラネは心の渇きを感じていた。
たとえば、良い演技をして人々に感動を与えた時もそう、テレビに出て周りの人から持て囃される時もそう、偉いプロデューサーによって機会を与えられた時もそう、道を歩いているだけで握手を求められる時もそう。
人々が理想とする人生を歩みながらも、ソラネの胸中にはずっと空虚が宿っていた。
その渇きがどこから生じるのか、ソラネ自身、明確化することが出来ていなかった。それ故、何をすればその渇きが満たされるのかも分からない。
だからこそ、ソラネは自分に出来ることは何でもやった。
更に演技にも容姿にも磨きを加えたし、それによって活躍の場を広げていった。
「……変わらない」
それでも心の渇きが飢えることはなかった。
どれだけソラネが芸能界で活躍しようとも、多くの才能が集う芸能界では『芥川ソラネ』という存在は、烏合の衆に過ぎない。ソラネのファンがどれだけ多く見えようとも、その傍らで他の芸能人をもっと好きになっていたりするものだ。
また、大御所がいることだけが問題ではない。どんどんと次世代が出没して、食われてしまう。それこそ、多くの芸能人や芸能界志望者を、ソラネが持ち前の才能と磨き続けた才能によって食いつぶしたように、だ。
「これが安堵できない理由なのよね」
心の渇きをそう定義することによって、ソラネは少しだけ腑に落ちた気がした。
ずっと誰かに背中を追われていて、居場所を奪われる恐怖を抱きながら、心が満たされるはずがない。
つまり、芸能界という華々しい場所でソラネが本当に満たされるためには、誰とも被らないような目立ち方をして、オンリーワンの存在にならなければならない。
もっと名誉を集めれば。
もっと話題が集まれば。
「そうしたら、私はずっと輝き続けることが出来る。そうすれば、私の心は満たされるはずだ」
だからこそ、ソラネは世間の注目を浴びるための行動をし続ける。それがどんな方法であろうとも、だ。
<――②へ続く>

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