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とある山の中の、大の大人が二人も入れないような小さな穴。しかし、子供であれば四、五人くらいは優に入ることが出来るような大きさだ。
この何でもないような小さな穴が、俺にとってはかけがえのない場所だった。
何故そんな場所が俺にとって大事な場所なのかと言えば――、
「よし、今日も秘密基地にいるぞ」
「おう、たいちゃんリーダー」
泰喜こと俺は、今日も友達を引導して秘密基地までやって来ていた。
小学四年生にとって、自分の家や学校以外で自分の居場所を持てるというのは、特別感に浸ることが出来る。しかも、友達も俺のことを慕ってくれているのだ。今日も俺を除いて、三人もついて来てくれた。
この秘密基地が俺にとって大切な場所にならないはずがない。
しかし、秘密基地とはいえ、やることは年相応のことだ。各々家から持ってきたゲームや玩具で遊んだり、他愛のない話をしていると、気付けば時間が過ぎ去っていく。
そんなの家でも出来るだろ、と誰もが言葉にせずとも分かっている。けれど、こうして非日常の場所で時間を過ごすことが大きいのだ。
「ねぇ、たいちゃん、知ってる?」
今日も今日とて輪になって自由に時間を過ごしていると、誠司が声を出した。今やっているゲームに飽きたから話をしたくなったことは、容易に想像出来る。
最近ハマっている格闘ゲームから目を離さず、「何を?」と返事した。
「この山、もしかしたら無くなるかもしれないんだって」
「は?」
誠司の言葉があまりにも予想外過ぎて、ゲームの操作を誤った。俺が操作していたキャラは、敵からの攻撃を受けて致命傷を負ってしまう。ここまで追い込まれたら、逆転勝利することは難しい。
俺はゲーム画面から目を離すと、
「無くなるかもってどういうことだよ」
話題を深堀する。
「噂だけどさ、僕達が住んでる町と向こう側の町を繋ぐための道を作る計画があるんだって。そのためには、この山は邪魔でしょ? だから無くすとか」
「いつかって聞いたのか?」
「ううん、そこまでは知らないけど」
切羽詰まって問いただす俺に、誠司は視線を泳がせながら答えた。
「なら、そんなのは嘘だ。だいたい山を無くすってどうやるんだよ。こんな大きな山を、人の手で無くせるわけがないだろ」
そう言う俺に、「それもそうだね」とみんな同調してくれた。
「それにさ、もし無くなるって言うなら、俺がこの秘密基地を無くならないように守るってーの」
「流石たいちゃん、俺達のリーダーだ」
「はははっ、だろ?」
仲間たちの声に、俺は胸を反らしながら応じる。
こんなにも俺のことを慕ってくれている仲間がいるのは、この秘密基地があるからだ。だから、もし誠司の言う通りに秘密基地がなくなるのは許せないことだ。
そして、もう一つ。
この秘密基地を無くしてはいけない理由が俺にはあった。
その理由とは――、
「ここは靖にぃに譲ってもらった場所なんだ。絶対に無くさせない」
靖彰という名の近所のお兄ちゃんとの想い出が詰まっていた場所だからだ。
<――②へ続く>

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